自分のキーボードについてウダウダ語るだけ

本記事はタイパー Advent Calendar 2023 23日目の記事です.

当初は『タイパー向けカスタムキーボード入門』的な内容を予定していたが, 性格上その手の記事を書くのに致命的に向いていなかったため, 自分が使っているキーボードについてウダウダ語ることにした.

タイパーカスタムキーボード部日本支部マジで俺しか部員いなくね?という過疎っぷりでアレなので, 本記事を通じて興味を持ってしまいこっち側に堕ちてくれる人が一人でもいればいいなって思います. はい.

前提: カスタムキーボードとは

Custom Keyboard

カスタムキーボード。 一応カスタムデザインのキーボード全てだが、ハイエンドキーボードの事を示すことが多い。

海外で「自作キーボード」と同じ方向性を持つフレーズ(既存品ではないキーボード)。 キーボードに関する趣味は「Mechanical Keyboards」と表記される場合も多いが、これは一般キーボードのキーキャップ交換品などのメカニカルキーボードに関する趣味全般を指す。 自分で設計から始める場合は「DIY Keyboard」や「Self-Designed Keyboard」の方が当てはまるが、そもそも完全自作は少ない。(海外の自作キーボード事情

とのことです.

基礎知識・用語については面倒なので外部の記事に丸投げしたい. 都度この辺を参照してください:

普段使っているキーボード

具体的なイメージもないまま気の狂ったオタクの自分語り聞かされても死ね電波ってなるだろうからとりあえず手元・打鍵音をご覧ください. まあTyping Sounds Testなんて大してあてにならないんだけど.

Frog Mini HHKB Silver

Geonworks Frog Miniを使っている. Kustom 15年の歴史ィ! 理由:

ガスケット系の柔らかく衝撃吸収性があるようなマウント + フォーム全部盛りで空洞感をなくすようなビルドが界隈の主流となってきている(気がする)昨今だが, 俺は打鍵時の衝撃や空洞感は重要なフィードバックであると考えており, それらを完全に排除するようなキット及びビルドが好きではない. また, ぽよんぽよん跳ねてプレート位置が暴れるのはゲーム, とりわけ音ゲー的に鬱陶しい(タイピングは50A O-Ring Gasketくらいの硬さなら何の問題もないと思うが).

で, これら全てを満たし, かつ現在入手可能(In-stock)であるものを検討したところ, Frog Miniだけが該当した. 実際のところ気に入るかは買って届くまでわからなかったが, 結論から言えば滅茶苦茶気に入っており, Geonworks信者と化している. 二枚持ってる.

音の傾向としては, ThockにもClackにも寄っておらず, ビルド次第といった感じだと思う. 筐体のオタクというわけではないのであんま自信ないが.

Stock Aluminium Plate (-> Custom CF Plateに変更予定)

標準のAlu Plateを使っている. プレート自体には特に不満なし.

プレートの材質は一通り試したが, 基本的にはAluで良いと思う. 一番リファレンス的な感触と鳴り方がする(と思う)し, 剛性があってゲーミング的にも適している.

ただ, このボードに載せている軸でAluだとペチ感が強すぎるので, Custom CF Plate (Frog MiniにはCF Plateのオプションがないので個人的に発注した)に変更……する予定だったが, 現時点で届かないどころか発送すらされていない.

Tadpole Pin 90A

Frog MiniはTadpole Pinというシリコン製のパーツによってプレートをマウントしている. 分類的にはトップマウントの亜種になるが, ネジ止め式のオーソドックスなトップマウントと比べて, パーツがシリコン製であることとプレートをトップケースに密着させないことから, ケースへの共振が抑制されている (と思う. ただ自分で筐体を設計したことがあるわけでもなくマウント方式についてそんな詳しいわけでもないのであんま自信ない).

Tadpole Pinのオプションには50A~90Aの硬さがあり, 標準は80Aとなっているが, 剛性が少し物足りなかったため90Aに変更して使っている.

GEON Metal Sticker

ケース右下の空白部分にGEON Metal Stickerを貼ってGeonworks製のキーボードであることを主張している. この場所に貼れるのはHHKB Caseの特権. でも常に見えるところにあると主張が激しすぎるような気がしてきたのでケース背面の中央に貼った方がよかったかもしれん. ステッカーだけならBasekeysから安い送料で購入できるので, そのうち貼り直すかも.

No Foams

Foamの類は一切入れていない. スペースバーの下にだけ1.0mm EVA Sheetを試してはいたが, 最終的にこれも不要と判断した. 真のハイエンドキーボードにFoamなんかいらねえんだよ!

Modifications

若干の不満点があるため多少手を加えている.

SJ5382 Compatible Feet

Frog Miniには一点だけ微妙な点があり, 標準のゴム足の設計が悪いのか吸振性に乏しく結構ガタガタする. 厚めのラバーマット等に置いている場合は問題に感じないかもしれないが, 遊戯王のプレマ(薄っぺらい)だったり机上に直接置くと顕著に感じる.

というわけでゴム足は別のものに変えた方がよさそうで, とりあえず順張りして多くのカスタムキーボードで使われているSJ5382互換の8mmゴム足を使ってみることにした.

こんなことで改善されるのか正直半信半疑だったけどあっさり改善されてワロタ. 厄介オタクの巣窟で広く使われているものにはちゃんと理由があるというわけだ. 見た目アレだけどキーボードの裏面を眺めてニチャる趣味を持っていないのでまあヨシとする(というよりFrogの裏面は簡素で眺めるようなものでもない).

Force Break Mod

ボトムケースとプレート及びトップケースの接触部分にマスキングテープを貼り, 共振の抑制を図っている. この改造はForce Break Modと呼ばれている. 効果のほどはキーボード(接触部分の表面処理の微妙な差とかで変わってくるという説を読んだことがある)とマウント方式によるが, Frog Miniの場合は効果があり, 定番のModとなっている.

側面方向はテープ貼ると却って妙な共振を発生させる結果となってしまったので貼らない方が良さそう.

Diamond-Polished Novelkeys Dream Cream w/ TX 15mm 60gf

Novelkeys Dream Creamを載せている. 色々あって(詠唱破棄)これに落ち着いた. 打鍵性能的にはTotal Travel 4.0mm, Actuation Point 2.0mmの古典的なリニア軸. ステム及びハウジングは全てPOM製であり, 硬質的な音と感触, 高い自己潤滑性を持つという謳い文句である.

Novelkeys Dream CreamはNovelkeys Creamのアップデート版で, 600k+ ActuationsのBreak-inを行いNovelkeys Creamに見られた極めて酷い擦れ(高い自己潤滑性とは?)を大幅に軽減している. Break-inと言うと聞き慣れないかもしれないが, 要するにこれはタイピング界で言う"へたれ"のことで, 機械的にスイッチの押下を行うことで使い古した状態に持っていくことを言う. 新品のスイッチと酷使されたスイッチの感触が全く異なることはタイパーの皆さんであれば経験則としてご存知だろう.

ちなみに, このような潤滑, 摩擦, 摩耗等を含めた相対運動における相対作用する表面の科学をTribologyと言うらしい. リアフォのキーキャップの種類(色と印刷方式)によって摩擦係数が変わって押し心地が云々とかいう話もTribologyに含まれる.

Diamond-Polished Stem

工場でのBreak-inにより大分マシにはなったものの, 完璧とはいえず, まだまだ擦れた感触があったのでダイヤモンド研磨を行った.

ダイヤモンド研磨については, 色々と実験した結果ステムだけ行うことにした. ステムは他のパーツ全てと接触するため, それだけでも絶大な効果が見込める. リーフを研磨すると感触/音がおかしくなったのでハウジングには一切触れない方が良さそう(何故か俺以外に誰も報告していないが……). というわけでステム以外は過去の度重なる実験の残骸を使用して研磨を行っている.

TX 15mm 60gf

Novelkeys Dream Creamのデフォルトのバネは70gf(Theremingoatによると実測値はBottom-out Force 71.9gf)であり, 重すぎるためサードパーティのバネに換装している.

TX 15mmがCherry MXの反発の仕方に酷似しつつ, 品質はCherry純正のバネより圧倒的に良くて一番好き.

※界隈外の人間が勘違いしているところを散見するので一応書いておくが, 60gfというのはSpring/Bottom-out Forceのことであって, Actuation Forceのことではない.

ルブについて

前提として, 俺は軸の品質に由来した問題(擦過, ノイズ)に対処するために潤滑油という"不純物"を塗布する行為が好きではない. 潤滑といいながら余計な抵抗を生じて叩き辛くなるし, 打鍵音はミュートに寄るし, 何よりルブの味で軸自体の味が薄められるのがなんかむかつく. かといって一切ルブしていない軸は(Pearlioのような例外を除き)音も感触も実際悪いので不要だとは言わないが, 最小限に抑えるべきだと思っている. だからどれだけ面倒でもダイヤモンド研磨をする必要があったんですね.

で, 実際どの程度塗っているかだが, Stem Legs及びRailsにのみKrytox GPL 105/205 Mix (7:3)を少量塗布している. Pole, Housing Rails, Leafまで塗ると過剰になり, 動きは鈍く打鍵音もミュートに寄りすぎてキモかったので塗っていない.

バネについては特にデメリットもなくやらない理由がない(と思う)ので脳死で定石通りKrytox GPL 105 G0でバッグルブを行っている.

フィルムについて

していない.

GMK Oblivion V3.1

GMK Oblivion V3.1を被せている. 先日のBFCMセールで買った.

定番すぎてあまり書くことないんだけど, 一応GMKを使っている積極的な理由として,

がある.

タイピング的なことを補足しておくと, カスタム界隈ではCherry Profileという高さのキーキャップが主流となっていて(これもCherry Profile), 市販されているメカニカルキーボードの多くで使われているOEM Profileよりも低く, どちらかといえばRealforce/HHKBのキーキャップに近い高さをしている. なお, 俺の場合, OEM Profile -> Cherry Profileに変えたことによるタイピングの記録の変化は特になかった.

AEBoards Staebies V2.1

キーキャップが適合していれば最強と名高い(俺調べ)Staebiesを使っている. ルブはKrytox XHT-BDZを薄く塗っている.

GMK Oblivion V3.1が初GMKかつ初Staebies適合キーキャップなんだけど, スペースバーの打鍵感が完璧すぎて笑った. もうこれしか使えん.

DZ60RGB-WKL (-> FM60-Sに変更予定)

本当は半田付けして使いたいのだけど, CF Plateが届かないためできず, 今のところHotswap PCBのDZ60RGB-WKLを使っている. Frog Mini標準のHotswap PCBであるFM60-HはStepped CapsLockにしか対応していない謎仕様なので別のものを使っている. CF Plateが届き次第, Frog Mini標準のSolder PCBであるFM60-Sに半田付けして"完成"させる予定.

PCBについてそれほど拘るような部分はないが, 一応,

あたりを考慮して選んではいる. Flex-cut PCBは本当に地雷で最悪なトレンドだったのでみなさんやめた方がいいです. 筐体に組み込む前から分かるくらい明らかに音も感触も悪くなるよあれ.

QMKの設定については音ゲー向けQMKの設定等を参照.

勝手に想定した質問と回答

でも御高いんでしょう?

そうでもない. ここ半年〜一年ほどで金で殴るフェーズは完全に終了して価格競争の流れが来ている! 異常に拘らなければ筐体 + スイッチ + キーキャップまで含めてもリアフォHHKBその他と同程度の値段でまともなキーボード組めると思う. ガスケット系のマウントが(何故か)界隈の主流なので, その他のマウント方式についてはまだ供給が少なく高い筐体を買う必要があるけど, これも時間の問題だと思う.

このキーボード組むのにいくらかかった?

80kくらい? ちゃんと計算してないけど. ほぼ自キ活のためだけに買った工具や謎の機械(超音波洗浄器, ドライブース, Break-in Machine)も含めると+40kくらいかな.

今までキーボードにどれだけ費やした?

計算したくない.

Cherry MX Brown, どこに行った?

音ゲー用スイッチとして永久就職の予定だったけど, 4.0mm Linear + TX 15mm 60gfが叩きやすすぎていらない気がしてきた.

一応, Diamond-Polish + Gateron KS-3 Milky Pro Top + TX 15mm 60gfまでやって組むつもりではあるのだけど, 観賞用キーボードになりそうな予感…… Diamond-Polishは自分で研磨するよりMX2A買った方がいいかも(ステムと謎にセンターマストが研磨済み, 天キーのFILCOブースで触った感じ実際効果あった). 現状, (粗悪な)工場潤滑済みのものしかなくて剥がす必要があって面倒だけど……

カスタムキーボードって遅延とかどうなの

QMKの場合, Single-key Latency (PCB Estimated) 1ms, 4k Chord Split Delay 3ms, 8k Chord Split Delay 7-8msって感じ. 音ゲー向けQMKの設定等を参照.

メカニカル以外のカスタムってないの

ある程度分かってる人ならRapid Trigger付き静電容量無接点も磁気スイッチも, あとALPSも組めるよ.

日本語配列のカスタムは組める?

俺の知ってる範囲だと,

あたりがタイパー諸氏が求めているような(変則的でない)JIS配列で組める. Discontinued/Ended Group Buyなのも含めるとJP60SS, Clueboard, Navi60がある.

キーキャップはFILCO (OEM Profile), GMK JIS, Acid Casps, 無刻印, 印字のずれは妥協するのどれかって感じ(だと思う). GMK JISはまだ在庫あるとこはあるので間に合う.

金で買える手っ取り早いエンドゲーム教えろ

キーボードの好みなんて人によるし(それがこの趣味の良いところでもある), 俺の好みがお前と一致しているかは知らないけど,

が現在買える中では一番良いと思う.

Gateron X R2は持ってないからアレだけど, 自分で研磨しないなら多分こいつが一番良い. 持ってないけど. 多分. Total Travel 4.0mm, South Side Spring Collarなしで普通に叩きやすくて, 予めダイヤモンド研磨済み. 工場潤滑もされてないから超音波洗浄器と中性洗剤で剥がすプロセスも不要. ただ在庫が基本的にないし送料が高い.

Gateron X R2以外で面倒なことしなくても品質良くて叩きやすいのだとWS Morandiがお勧め. Total Travel 3.15mmなので気に入る人は気に入ると思う(公称値は3.5mmとあるが, この界隈の軸の公称値はあてにしてはいけない). 18mm Two-Stage Springが入っているので, ショートストロークでも軽すぎて打ち辛いみたいなことはないと思う(Long Springは最初から縮んでいるためInitial Forceが強くなる). 工場潤滑の品質も良いから分解せずそのまま使っていい. ただ一点, ストロークが短いのでそれ用のスタビ(ロングポール用)が必要であることに注意.

NK (Dream) Creamは研磨までやってもまあまあ擦れ感あるから他人には勧めない.

Frog MiniでHotswap PCBを使いたい場合(電子工作のオタクでないなら最初はそうした方がいい), FM60-HだとStepped CapsLockしか対応していない謎仕様なので, 別のものを買った方がいい. GH60 Compatible 1.6mm Non-Flexで希望する配列に対応しているならなんでもいいけど, 多分DZ60RGB-WKLが一番無難. Frog TKLのPCBは特に問題ない.

ルブはスタビ用にXHT-BDZ or/and 205G0, 軸用に105/205 Mix, バネ用に105G0があればとりあえず十分だと思う.

終わりに

いかがでしたか?(アフィカス構文) 界隈外の人間にどの程度伝わってるのかわからん内容だけど, まあこういう世界があるんだなーくらいにでも思ってくれれば. でも自分でキーボード組むの飽きたし他のタイパーがどういうビルドするのか見たいから誰かこっちへおいで……

Gateron X R2を少量売ってくれる方募集してます.

この記事はDiamond-Polished Novelkeys Dream Cream w/ TX 15mm 60gf on Frog Miniで書かれました.